※1 ヒール打ち機のハンマー

画像はヒールと中底を繋ぎ固定する釘を打つ機械。
RPGのトラップのようにガシャン!と釘が飛び出してくる。
真ん中にヒールの中心に中底からねじ込み固定するヒール止めと、ヒール止めの周りに打ち込んでずれを防止するねじ釘がある。
かつさんの言うような、エレガント系の細くて高いヒールには、ヒールが折れないよう中心に金属芯が入れられており、真ん中にヒール止めをねじ込むことができない場合があるので少しずらす必要がある。
中底には底を補強する板状のシャンクもあり、これらのパーツを避けつつできるだけ中心に、また、ヒールから釘の先端がはみ出さないようにハンマーの角度を調整するんだそう。

※2 ジミー・チュウ(JIMMY CHOO)

ラグジュアリーでセクシーながら、フィット感が良いとセレブに大人気のシューズを中心としたイギリスのブランド。ダイアナ元皇太子妃が愛用していたことでも有名。
スタースタッズの付いたパンプスや財布などが人気。
「プラダを着た悪魔」や「セックス・アンド・ザ・シティ」などでも登場。
ちょ、今、私アン・ハサウェイぽくない!?って大股で歩くバリキャリのような気分にさせてくれるパンプス。
ジミー・チュウ 公式ホームページ

※3 ザノッティ

正式名称は「ジュゼッペ・ザノッティ(GIUSEPPE ZANOTTI)」
イタリアのシューズブランド。
「履いて褒められ、女性に自信を持たせる靴」がコンセプトの、ピンヒールに刺繍やビジュー、大きめの装飾などできらっきらしたドレスシューズが多い。
見る人が見ればすぐに「あ、ザノッティ」と分かるアヴァンギャルドでオリジナリティあふれるデザインが特徴。人と一緒はイヤ、というお洒落上級者さんにおススメ。
多くの日本人は最初ブランドロゴが読めず困惑する。(と思っている)
余談ですが「ジュゼッペ」って英語圏のジョゼフ、スペイン語圏のホセ、ドイツ語圏のヨーゼフに相当するらしい。
日本やったらなんでしょうね。
ジュゼッペ・ザノッティ 公式ホームページ

※4 紙型

デザイン画(仕様書)を元に木型にデザインを描き、それを紙へ平面に起こす作業。
洋服の型紙と一緒。
紙型づくりは平面から立体へ、立体から平面へと変換していく複雑な作業。
①木型にテープを貼り、その上に靴のラインを書く。
②ラインに沿ってテープをカットしながら剥がし、パーツごとに平面に落とし込む。
靴はパーツが多いので、一足作るのに
①アッパー型(靴の甲部分の外側、甲材の表側)
②裏革型(靴の甲部分の内側、甲材の裏側)
③中敷型(インソールとも呼ばれる部分)
④中底型(中敷と本底の間の底、普段は見えない)
⑤本底型(地面と設置する底、アウトソールとも呼ばれる部分)
の合計5つの紙型が必要。しかもサイズ毎に作らないといけないので大変な作業。
想像しただけで吐きそうだけど、靴のフォルムを決める重要な作業なので、職人すごい・・って思います。

※5 踵のトップから小指の方まで行くライン

踵の一番高い部分から小指側にかけてのサイドのライン。
このサイドのライン部分をいかに滑らかで華奢に妖艶に「曲線」を描けるか、 ということだそうです。
ちなみにサイドのカットラインはまっすぐ引く方が簡単で(抜き型は基本直線的です) 中国製の大量生産のパンプスはサイドのカットラインが美しいものが少ない(ほぼない)そう。 曲線美とよく聞きますけど、体のラインだけじゃなくってこういう細かいところにもエロスを宿すのはカッコイイですね

※6 吊り込み

革や合成皮革などの甲材を中底に張り合わせていく作業のこと。甲材を引っ張りながらワニという専用のペンチを使って貼っていきます。
力が強すぎると甲材が裂けたり割れたりします。逆に弱すぎると木型にきちんと沿うことが出来ず成形が出来ない、職人の勘と経験がものをいう作業。
吊り込み作業をする職人さんを貼工(はりこう)さんといいます。
実際現場で見たことありますが、めちゃくちゃ早いです。餃子を包むみたいにキュキュッと折りたたんでいく様子は圧巻です。
ちなみに貼工さんは繊細な手の感覚と正確さが必要なので女性が多いそうです。

※7 カオヴィラ

正式名称は「レネ・カオヴィラ(Rene Caovilla) 」 イタリアの老舗高級婦人靴ブランド。ブランドのアイコンシューズは定番のモデル「CLEO(クレオ)」。ブランドのシンボルともなっている蛇を足首に巻きつけるようなデザインのサンダルで、スワロフスキーは1,200個以上を使用。他の靴もビジューが多く使われたデザインが多い。ジュエリーシューズという新たな領域をつくり出したブランド。 とりあえず履く人やシーンが限定されるよね・・・な靴が多い。 電車に乗る人は履いてはいけないレッドカーペット用の靴(私見)かなーって思います。
レネ・カオヴィラ 公式ホームページ

※8 ローフィエラ

世界最大の国際見本市ミラノサローネの本会場のこと。
今回の会話中ではイタリア・ミラノで行われるMICAM(ミカム・国際靴見本市)のことを指す。女性靴、女性トレンディシューズ、国際的デザイナー、エレガント・ラグジュアリーメンズ/レディースシューズ、ヤングファッションシューズ、付属品、子供靴など世界的に最も注目される靴の展示会。
靴業界の見本市では世界のトップのトレンド発信の場。もちろんマニアックな人たちが集まっているのでイケてる靴を履いていると追いはぎのように見せろと詰め寄られることもあるそう。
ミカム(MICAM) 公式ホームページ

※9 カルミナ(CARMINA)

紳士靴を主に扱うスペインのブランド。「最高級の靴をつくる」をコンセプトに19世紀から続く老舗シューメーカー。
レディースではピンヒールや10㎝超えのハイヒールは無いが革の質感やヒールの砂時計のようなフォルムなどが重厚感があり上品で美しい佇まい。
ジミー・チュウが米倉涼子なら、カルミナは黒木瞳。そんな感じです。
カルミナ 公式ホームページ

※10 スカルプチャーヒール

ヒール部分自体に造形が施されていること。ゴルフボールのようだったり、果ては銅像のようなものだったり、ブランドロゴをあしらっちゃったり、と遊び心がとどまるところを知らないスカルプチャーヒール界隈。
歩きやすいかどうかは別。
目立ったもん勝ち。

※11 ラスト

靴の木型のこと。靴を作るための原型でプラスチック製やアルミ製などがある。
ラストに中底を付ける→甲材を被せる→本底を付ける、の工程で靴は作られるので、木型は靴のフォルムそのものとなる。
名前の由来は「靴の良し悪しは、最終的に靴型で決まる」という意味で「LAST」と呼ばれるようになったそう。
外見もですけど、中身が重要ってことですね。深いですね。

※12 伸ばし率が一定でボールベースを取る

靴を作るときのベースとして、足幅・足囲・ヒールカップ(踵の部分)の径は足長の長さに比例して等間隔(ピッチ)で大きくなるように設定していきます。
たとえば、JIS規格による数値で説明すると
足長23.0㎝表記/ワイズCラストの場合
足囲216mm(213~218は許容範囲),足幅89mm
足長23.5㎝表記/ワイズCラストの場合
足囲219mm(216~221は許容範囲),足幅91mm
となり足長のピッチは5mmピッチ,足囲は3mmピッチとなります。
この等間隔にピッチを設定することをこの場では「ボールベースをとる」と表現しています。
(JIS規格のピッチは参考値であり、厳密にはラスト作成はアッパーの材質や伸び率によって足入れがかわるので、メーカー/ラストごとに異なります)

※13 のり引き

ここでは、本体と底部分を糊でくっつけること。(そのあとに圧着する作業もある)
本体材と裏材料の裏側に糊を機械で塗って合わせる。
服の仕付けのように、ミシンをかけやすくするために生地を折り曲げて糊でくっつける、アッパーに裏地がある場合にも糊を使う。
かつさんが解説している通り、靴が変形しないように硬いのりを使うので、海外生産でコンテナ輸入する靴が硬いのは仕方がないっちゃ仕方がない。
また、のり引きにはポーラス引き、ラテ引き等糊の引き方に種類がある。
糊の引き方によっても硬さが決まるそうで・・・ってまた「ポーラス引き、ラテ引き」について説明しなければならない・・・。また次の機会に!

※14 靴が笑う

靴業界では、靴の履き口が開いていることを「靴が笑う」という。
ここでは主に熱耐性の低いケミカルシューズ(合成皮革・人工皮革)輸送時にコンテナ内の熱に負けて甲材が緩くなり、履いた時に足と靴の間に隙間が出来て、上から見ると空洞があるように見える状態を指す。
試着時に上から見て履き口が笑っている靴は、靴擦れしたり足を痛める原因となるのでインソールなどで調整するか、別の靴にした方がいいです。
そこを指摘してくれる店員さんはグッジョブです。

※15 チャールズ・アンド・キース

1996年、Charles Wong と Keith Wong のウォン兄弟がスタートしたシンガポール発のシューズとバッグをメインに展開する中間価格帯のブランド、チャールズ・アンド・キース(CHARLES&KEITH)。
アジア・欧米・中東・アフリカなど世界35カ国に展開を広げており、ZARAのようにうまくトレンドをモードに落とし込んだ万人受けするデザインが多く、年齢層を問わず使える・シンプル・お手頃・高見えするのがウリ。
ひとつ残念なのは凝ったデザインものは日本では展開されないことが多いところ。最近では若手新進デザイナーとのコラボラインなども発表しており、今後どう展開していくのか楽しみなブランドのひとつ。
チャールズ・アンド・キース 公式ホームページ

※16 ピース

細革ともいう。
コバ(※21)部分の紐状の飾り。
平らなもの、刻みが入ったもの、ストームという盛り上がりがあるもの、スリットが入ったものなど種類が豊富。ピースだけの見本帳があるくらい。
底の交換がしやすい、防水の役目があるなど機能性だけでなく、デザインの一部として取り付けられることもあります。
使用する革や素材によって靴の雰囲気が変わるアクセサリー的なアイテム。
これだけでブランドが分かったりする、靴マニアに見せびらかしたいパーツのひとつ。

※17 マッケイ
※18 グッドイヤーウェルト

正しくは「マッケイ式製法」「グッドイヤー・ウェルテッド製法」
甲材と本底を縫い付ける技法のこと。
紳士靴メーカーさんの方が上手に図解していらっしゃるので詳しくはリンクをご覧ください。
婦人用パンプスには、ほとんど使われていません。
だいたいは縫わずに糊で貼り付けるセメンテッド製法です。
なぜならソールがはみ出たデザインはゴツイ印象を与えちゃうからです。
フォクシーとかトッカのお洋服を華麗に着こなしているのに、指にメリケンサックつけてるようなもんです。
ユニオンロイヤル 公式ホームページ

※19 ルブタン

正式名称は「クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)」。
フランスのラグジュアリーシューズブランド。
「レッドソール」と呼ばれる赤いアウトソール(靴底)がアイコン。
とんでもなく高く華奢なハイヒール、華やかでセクシーなデザインが多い。
レッドソールの由来は、ルブタン氏が底の色をどうしようか考えていたとき、隣りに赤いマニキュアを塗っていた女性がいたのでそれを借りてソールに塗ってみたところ、想像通りに仕上がったからだそう。
すごく美しいフォルムなのですがルブタン本人が自虐ネタのごとく「King of painful Shoes(痛みを伴う靴の王様)」と言っている通り、長時間履くにはなかなか気合いのいるパンプス。
キングオブエロス。
歩くための靴ではないという業界人の意見多数だったりするけど「セックス・アンド・ザ・シティ」を見ると憧れてしまいキャリーになりたいと思うが、リアルになれるのはキャシィ塚本(ごっつええ感じ)くらいだったりする。
ちなみにキャシィ塚本とは、ダウンタウンのごっつええ感じのコントコーナーで大きな青色レンズのメガネをかけ、奇抜な柄の服装に身をまとっている料理講師のことです。(気になる方は検索を!)
クリスチャン・ルブタン 公式ホームページ

※20 コバ

ソールやヒールの側面。
靴の土踏まず部分より前方を縁取るウェルト(※21参照)のうち、アッパー(甲材)よりも外側にはみ出た部分のこと。
コバって英語かと思ったら実は「木端(こば)」をカタカナ読みした日本語。
英語ではEdge。
因みにGoogle翻訳で「コバ」と入れると「Koba」になるが「靴のコバ」にすると「Shoe edge」になる。みらい翻訳でも同じ。業界用語にはまだまだ弱いようなので、翻訳を機械任せにしている人は要注意。
革小物においても革材の側面はコバって呼んだりする。
全然関係ないが、最近精度が上がったと言われるグーグル先生の翻訳だが、つい最近「瓜ふたつ」と調べたら「Two melons」と返されました。ニホンゴムズカシイネ。

※21 ウェルト

グッドイヤー・ウェルテッド製法(※18参照)などにおいて使われる、アッパーと底を繋ぎ合わせるためのパーツ。
靴のソール周りを縁取るようにある、細長い帯状のもの。
ドクター・マーチンの黄色のステッチのあるところとか。
ステッチを効かせた飾りのものも多く、これの化繊感が強いと安っぽく見えてゲキ萎え。
反面ここをちゃんとした糸で本革ベースでしっかり作っていると高見え。
「ウェルト」について考えてみた!紳士靴の製法あれこれ

※22 バフがけ

ここでは底板のサイドを均一に削ることを指す。
バフ=削る。
何のためにバフがけするかと言うと、なめらかに整えてコバ塗りの色を綺麗にムラ無く定着させるため。
また、アッパーの底に当たる部分のバフがけもあります。
吊り込みによって餃子のように甲材の凹凸のシワ寄せが出来ているため、平らな本底とみっちり定着させるためにバフがけを行います。
あゆが「かつさんの工場で見た」と言っている機械は本体用のバフの機械。
底板用のバフ掛け機械は底板屋さんにしかない。
靴は色んな場所で色んな部品が作られてて、それが合わさって完成してるんですね。

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